2014年9月21日日曜日

■ 小屋の清掃と雑木林の剪定    2014年9月〜11

幸いなことに、程なくして小屋の持ち主に会うことが出来た。小屋はかなり前から使わなくなり、取り壊そうかとも考えていたという。小屋の使用について尋ねると、有効に活用してもらえれば「一石三鳥」だと快諾を得て、入り口のカギを受け取った。

南京錠を開け、時間の止まった小屋にあがる。
まずは、家財道具を外に運び出し、長年のほこりを掃き出す
食器棚を動かすと、人の代わりに小屋を守っていたヤモリが身を寄せ合っている。大量の食器、酒瓶、バーカウンター、カラオケ、アルバム… 清掃はここで過ごされた濃密な時間に想いを馳せながらの作業となった。















外から中の様子を見たときは気付かなかったが、天井には雨漏りの跡が見える。床板はところどころ虫食いで抜け落ち、床板に張られたゴザは、ほうきで触れるとボロボロと崩れる。
朽ちたゴザを剥がすと、床板の一部が外せるようになっていることが分かった。何かを収納するためのものだろうか?


掃除を一段落させ、小屋の前に広がる雑木林に降りる。枯れ葉の厚く積もったふかふかの腐葉土に足をとられる。後に分かったことだが、この場所はかつて畑として利用され、木といえば大きな松が生えている程度だったらしい。

  雑木林の剪定と伐採は思った以上に大変で、海はなかなか姿を見せない。それでも、木々のあいだを抜けていく風は心地よく、波音も心なしか鮮明になったように感じる。「日比(ひび)」という地名が「響き」に由来していたことを思い出す。全身を使う作業は、固く凝っていた感性を解きほぐしていくようだ。様々な自然の力が渦巻く岬という場所に、身体が次第に馴染む。


樹間にできた小さな空き地に、一匹の黒いアゲハが寄りつくようになる。
木漏れ日のなかを悠然と飛ぶ姿に思わず見とれる。自分にとって未知の、それでいてどこか懐かしいような感覚だ。

後日、日比八幡宮の祭礼で唄われていた「お舟唄」の一節に目がとまる。

  蝶になりたや揚羽の蝶に いくよませかな北に住む

                 エーヘー  かほどまでうれし


                        出典『玉野市史 続編』(p.392)